本日は折り悪く冒険のメンバーが集まらず、初対面のペネさんとのふたりだけで街道に現れた賊の退治という依頼を受けました。
たった二人ではありますが、賊程度ならなんとかなるだろうと考えた私が浅はかでした。賊の首領、その正体は私が以前戦った上位蛮族、ディアブロと双璧を成す存在、ドレイクでした。
明らかに私達二人だけでは手が余る相手。震える私を叱咤したのは、果敢に戦うペネさんの存在でした。ただ一人でドレイクと、その部下達を足止めする姿を見て、奮起して戦うことが出来ました。
それでも徐々に消耗していく精神力。魔法を放つ度にすり減っていく感覚にめまいがして、最後の切り札だった魔晶石まで使い果たし、それでも倒れないドレイク。
握っていた魔晶石からマナが失われ、もう小さな火種ひとつすら出せないほど精神力が枯渇した私の目に写ったのは、それでも諦めずに不敵に笑うペネさんの姿でした。
ふと、彼女が手に持っている魔晶石が視界に入りました。彼女の目と私の目が合ったとき、言葉に出さずともどうすれば良いのか分かりました。
すかさず駆け寄り、彼女が投げ渡した魔晶石を受け取り、最後の魔法を放ちました。その時、妖精が普段ではありえないほど、大きな力を貸してくれた気がして、ドレイクは炎の鏃というには強すぎる、まるで炎の槍とも言うべき魔法によって倒れ伏しました。
安堵して座り込む私達の前に現れた、ドレイクの部下である蛮族。そいつが投げ渡した魔剣を受け取ったのは、私の魔法で倒れ伏したかに見えたドレイクでした。
あっけにとられる私達の前で竜化するドレイクを前に、私は自身の死を悟りました。しかし、何時まで経ってもその時は来ない。そのドレイクは不敵な声で名を名乗ると、部下たちを連れて逃げていきました。
……いいえ、違いますね。あれは見逃してもらったんです。いつもの私なら、生き延びたことを素直に喜ぶと思うのに、なぜだかその事がとても悔しくて、頭に血がのぼる程の怒りを感じました。この感覚は、冒険者としての矜持なのでしょうか。次は、あのドレイク、リンカーンに勝って見せたいです。
それくらい出来なくちゃ、あの人達に追いつけない。
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