去年、大掃除をしていたら冒険者になりたてになったころに買った日記を見つけた。
試しにめくってみると、中身は白紙。…まぁ去年のあの頃は依頼争奪戦に、学院から出された課題やらで
てんてこまいだったからな。仕方ないだろう。
まぁ、新年だしな。ちょうどいい機会だ。これを機に、冒険であったことやら何やらを書いていきたいと思う。
最近あったことだと…そうだな。やっぱり、でかい猪を討伐したことだろう。
私はあの日、朝早くに学院の寮から百の剣亭までやってきて、いつも通り依頼の争奪戦に参加して、…いつも通り依頼を取れなかった。
いつも、ちょっとした隙間をすり抜けていいところまで行くんだが、たいてい体格の良いやつに無理やり押されて、流されてしまう。
くっそう、あいつらちょっとは私に配慮しろよなまったく。
それで、いつもは依頼票を読み込んでいる奴やら、仲間を募集している奴やらにうまいこと声をかけて冒険に行くんだが、今回は違った。
見た目、言動ともにチャラい奴にいきなり指名されて、返事する暇もなく店主に依頼書を提出された。
…まぁ今こうして考えてみると、あの店ではあれくらい強引じゃないとやっていけないだろう。
あの時の私はあっけにとられていたがな。
それで、PTを組んだ後、軽い自己紹介…なんだが…その時私は、ミスを犯していたんだ。
PTを組んだ時にどんな技能を持った奴らと組んでいるのかが確認できていなかった。
神官がいなかったんだ。
まさか神官がいないなんてあの時は思わなかった。知っていたらポーションやらなんやらを買い足していただろう。
今、なぜあんなミスを犯したのだろうと、考え直してみると…やはり、PTメンバーに気圧されていたってのがあるだろう。
私以外、全員男性。しかも、かなり身長やら図体がでかい奴ばかり。しかも胡散臭い笑顔を浮かべている奴の体には名誉人族の鎖があるときたもんだ。
今までの冒険だったら、たいていは同い年、もしくは少し年上の女性がいたからなんとなく安心して冒険できていた。
だから、今回、負けるもんかっと思って本来確認しておくべきことをすっ飛ばしてしまった。
…今思い出した。あの鎖野郎にセクハラまがいのことされたな。覚えてろよなあいつ。
んで、そのあと、鉄道に乗って村周辺の駅まで向かった。鉄道での旅は快適そのものだった。
馬車よりずっといい。尻が痛くならないからな。
そして、村に到着。調べてみると、大小それぞれ2匹ずつの足跡があった。
んで、足跡を辿ってみると、猪っぽい奴に遭遇した。
…っぽいって書いたのは誰もその動物について知らなかったんだ。
いつも戦いの前に情報を教えてくれる仲間には感謝しないとな。
そして最悪なことに、でかい足跡が後ろの方から聞こえてきた。さっさと倒さないとな…さて、いつもの構えをして…
と考えていると、…そのでかい猪がいきなり突進してきた。
私はその攻撃をもろに受けた。………ふわっとした感覚のあと地面に打ち付けられた。
すぐに体制を立て直し、さぁ攻撃だ…!と思った時だな。神官がいないということに気が付いたのは。
血の気が引いた。前にはでかい猪。後ろからは大きな足音。
いつもなら、たとえ攻撃をくらったとしても神官の回復魔法ですぐに立ち直り、
前衛が削って、あと少しってところを、私のド派手な魔法でおいしい所をかっさらう。
これがいつもの戦闘だ。
だが今回はその、神官がいない。
"すぐにでも、目の前のこの猪を倒さないと、やられる"と思ってからは…何があったかあまり覚えていない。
今、私がこうして五体満足で日記を書いているんだ。うまいことやったんだろう。
…とにかく、この討伐依頼で得られたことや、反省点は数多くあることが分かった。
少し長く書きすぎたな。明日の争奪戦に備えるために早めに寝よう。
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