ああ、もう!イライラする!
死体なんか、今までいくらでも見てきたじゃないか。
あいつらはかわいくなかった。ボクはかわいい。それだけのこと。
なのにわざわざ日誌なんて慣れないものをつけてるボク自身に一番腹が立つ!
だいたいなんだあいつ!世界一かわいいボクより目立ちやがって!
ボクならまだやれたんだ。ちょっと一回気が遠くなっただけだ。
まあ、確かに、あの場に残っていたら、ボクの毛並みにちょっと傷がついていたかもしれない。
愛くるしいくるくるおめめが潰れていたかも。魅力的なピコピコ尻尾が動かなくなってたかもしれない。
だから、そうだ。あいつのやったことは、別に無駄じゃなかった。
そうだよ、ボクの、世界一かわいいボクを守ったんだ!誇ればいい!
ついでにこのボクがあいつのことを覚えててやろう!ボクより目立った不遜なやつとして!
よっし、そうと決まればこんな日誌なんておさらばだ!ボクは寝るよ!
睡眠不足で毛並みが悪くなったら世界の損失だからね!
……眠れない。
目を閉じると、あの鎧が砕ける音が耳にへばりつく。
なんだってんだ、もう。ちくしょう。ボクは、ああ、くそう。
魔剣の迷宮なんか、怖かなかった。
あのアンデッドどもだって、ボクのがかわいいし。怖くなんてない。
でも、なんで、あいつを失うのは……くそう、くそう。ボクらしくない!
ボクは笑ってるほうがかわいいんだ!全世界のボクの信望者どもは笑った顔を見たいだろう!
なんたってボクは世界一かわいいんだから!笑顔も世界一かわいい!
そりゃ、憂いた表情も素敵だろうけどさ。そうじゃなくて。ああ、話が逸れた。
……あああああああ!もう!何がしたくてこんな文章書いてるんだ!ボクは!
うう、頭いたくなってきた。
整理だ、整理。何を書くためにこんな日誌なんて開いたんだ。
あいつの、あいつへの謝罪。後、感謝。
あああ、うぐう。なんでボクがこんなことを。
でも、きっと、やらないと後悔する。
後悔するんだけど……ああ、もう、ガラじゃない!
(この先は何度も消して書き直された跡がある)
ごめんなさい。ありがとう。さようなら。ヘンリック。 |