朝、というより昼近く
重たい身体を引きずってサンタは目を覚ます
ここは貧民窟のとある宿
冒険者の店を営むような真っ当な宿では無いが、だからこそできることもある
水を浴びて、お偉方から頂戴した不浄を洗い流す
ここは、いい宿だ。サンタはそう考えた
かの“女狐”の息が隅々まで行き渡っている
少なくとも乱暴はされず、少なくとも水浴び場が併設され、少なくとも金を置いていかない輩はいない
そういえばお偉方はもうお帰りになったようだ
今日の稼ぎで玩具を買おうか、お菓子を買おうか
それを貰った子どもらの笑顔が頭に浮かぶ
しかし鏡に映った自分の姿は、到底サンタと呼べるものではなかった
「ひどい顔」
つい自嘲気味な声が漏れる
これまで幾度となく繰り返されてきた朝
その度その度、彼女は絶望していた
「あ、う……」
「お腹、いたいよぅ……」
うずくまる。答える声はない
これは、ブランブルグ西区は貧民窟
そのありふれた朝の光景の一つだ |