今日は久しぶりにアニムスが俺の元を訪ねて来た。要件は過去の、ハイマンである彼女の前世の記憶の復元をする目処が立ち 復元を行うと人格が崩壊する可能性が高いため別れの挨拶であった。
最初に聞いた時は耳を疑った、アニムスがこれまで生きてきたという魔法文明時代の何千年もの記憶の復元だ、それがそのまま復元されるならまず人の身に耐えることは出来ないだろう、本来はハイマンでさえ前世の記憶は完璧に残るわけではない。例え人格が残ったとしても、もう別人と言えるまでの影響を受けているに違いないだろう。
まだ寿命までに幾許かの猶予はあるからエリカの元で働かないと誘ったが、今のアニムスより魔法に長けた魔術師の記憶を復元する事を止める事は出来なかった、確かにそれは命を賭ける価値はあるだろう、それに納得してその道を選ぶなら俺に止める権利は無い、俺は自らの道をその足で進む人を いや、やはり悲しくはある、アニムスにとって今は過去に潰される程度のものだったらしい、確かに得たものはあっただろうに、だがそれ以上に過去に惹かれる物があったらしい。悲しくはある、しかし送り出すと決めた以上今はただ一人の友人としてアニムスが望んだ物を掴めるよう、願っている。
今日は久しぶりに大嫌いな神に祈ってしまったよ、もう会うことの叶わない友人にただ幸せがありますように、と。信仰していない信者でもない俺の祈りが届くとはとても思えないがそれでも結末に救いがあるように俺は自分勝手に祈るとしよう。 |