「……流石に厳しいなぁ…」
もう何度目かもわからないほど斬った蛮族の首を斬り落とし、ため息と共にそんな言葉を吐く。
なぜ今こうなってるのかを説明するなら「剣豪捜索中」「蛮族の群れ」「村を襲撃」これで大体足りる。僕の性格を知ってる人なら『あぁ…また考えもせずに助けに行ったのか…』とか思うのだろうが……全くその通りです。
いくら☆15Aでも限界はあるのだ、ましてや僕はサシでの勝負が得意なわけで、蛮族の軍隊から戦う力のないたくさんの人を守るような戦いは最も不得手としているわけで。
今僕の背後にいる村人たちは僕を心配そうに……いや違うね、自分の身を案じる結果僕の心配をしてるんだねコレ……
まぁ…そんな人たちでも守ってしまうのが僕でそこが仲間から再三注意されるところなのであって、今こうやって数十体の蛮族を同時に相手取って身体中傷だらけなのも…そういう甘さが招いた結果で……ま、後悔はないけれどね。
「あと何体かな……ひーふーみー……半分くらいか?」
ぼろぼろの身体と無駄に頑丈な心を奮い立たせて、目の前の敵に斬りかか______
「はい、終わり…ひふっ…」
声の方向に顔を向けると白衣を着た女性と…首輪をつけたまだ成人する年齢の半分も言ってない少女がいた。
「……なんだい、人質作戦かい?」
「ひ、ひふっ、こ、交換条件だよ…ひひっ!」
「へぇ……あと笑い方どうにかならないの…」
「この子、奴隷なの、ふひっ…他にも後ろに20人くらいいるの…ひっふ…」
「あ、無視しやがったな」
白衣の女の後ろを見ると確かに布切れのようなものを身につけてる者達が何人かいる、種族性別を問わない辺り適当に攫ってきたのだろうか。
「だ、だからね…ひ、この奴隷、と、そこの…村人の命…あなたと交換…して、くれない?ひふっ…」
「………………」
なるほど、さっき言った通り人質作戦か。多分これ以上軍の被害を増やしたくないのもあるんだろう……まぁ本命は僕…もしくは人族剣聖か…?
とはいえ、このままいけば村の人たちを傷つけずに蛮族達を全滅させることができるだろう。もしかしたら奴隷に手を出すかも知れないがその場合は走っていけば手を出す前に倒せる。オキツジさんほどではないにしても殺し切れる。つまり9割がた全員無傷で生還できる。
そう判断した僕は結論を口に出した。
「OK、連行かい?殺すのは勘弁だよ」
少しでも誰かが死ぬ可能性があるのなら僕は渋々命を差し出そう。聖人ではないが、誇れる人でありたいし。
「ひふっ……いいよ……ほら、奴隷を解放して…」
その合図で奴隷達の首輪が解かれる。ちゃんと約束を守ってくれる蛮族…いや、白衣の女は人族か…まぁ約束を守ってくれてよかった。
そう考えていると、白衣の女の近くにいた奴隷少女が飛び込んできた。いてえ。
わんわん泣いてて鼻声で何言ってるかわからないが謝罪と感謝の言葉だけはなんとかわかった。この子が受けたものを考えれば僕の犠牲くらいなんでもない、だから僕は彼女を涙をマントで拭って言った。
「泣かなくていいんだよ、君はこれから自由だ…もうこのことは忘れて、楽しく生きるんだよ…」
……うーん、我ながらはずかしい、死にたい、死地に行くけど死にたい。
そんな思いを汲み取ってか、彼女はどうにか泣き止んで謝罪と感謝を伝えて去ろうとする。
「あ、そうだ、忘れる前にちょっと伝えて欲しいんだけど」
そういえば、伝えないといけない事がまだあった、彼女にではなく友達にだが。
「…僕の友達に…待ってるって伝えてくれないかい?」
いつかの事件で誰かさんが言ってくれなかった言葉を、オブラートに包んで、僕は死にに行ったのではないと、勝つのか確定した賭けに乗ったのだと伝えるために。 |