この文章は魔法文明語で記述されています。
おはようございます。新しい"私"。
あなたは、私を覚えていますか?
私の名は"アニムス・バズカ"。あなたの前の私です。
記憶の移植に失敗し、記憶の無いまま目覚めた場合に備えてこれを記述します。
結論から言えば、あなたは私の転生体です。
研究所に残っていたものでも最も質の良い身体を選んでおきました。
齟齬が出ないように年齢は今の私の身体と同じです。
あなたから見て前回の肉体である私の身体と魂には、今まで転生して積み重なった膨大な記憶が詰め込まれていました。
ハイマンの特徴でもある身体のどこかにある魔法陣が、その本来の記憶の主達の姿を見る者に個別に見せていました。
私が魂に封印処置を施したため、あなたにはその膨大な記憶はないと思います。
私は、過去の誰かではなく私として生きてみたくなりました。
ハイマンとしての過去を捨て、生まれて来たのがあなたです。
記憶に振り回されずに、自由に自分の望むように生きてください。
ここからしばらく行ったところにブランブルグという街があります。
そこの炭焼ひよこ亭あるいは百剣亭を訪ねてください。私が冒険者として活動していた拠点です。
女主人マリアンデールにも話は通してあります。戻るのでしたら、円滑に戻れることでしょう。
先立つものを用意するための手段に使うのもいいかもしれません。
地図と交易共通語と魔法文明語の翻訳書を同封しておきます。赤いマークが書いてある方が北です。迷わないように。
また、過去の記憶である私達について記述したものを同封しておきます。
気になるのでしたらご覧ください。
それと服を着てください。用意があります。着てください。決して全裸で歩き回らないでください。着てください。
装備も私が使っていたものをいくつか残します。
人間関係については、特別深く親しい人物がいたわけではありません。
ですが、私の名を覚えている者もいることでしょう。
もし、覚えていないのでしたら機を狙った流言飛語には惑わされないようにしてください。
シャラルナフルと言うナイトメアの男性には特に気を付けてください。
私からは以上です。これからのあなたのご武運を祈ります。 |